鉄欠乏性貧血と薄毛の関係性とは

鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足し、赤血球中のヘモグロビンが十分に作られなくなることによって起こる貧血の一種です。この鉄欠乏性貧血が、薄毛の直接的な原因となることがあるのをご存知でしょうか。その関係性は、ヘモグロビンの重要な役割と深く関わっています。ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素と結合し、血液を通じて全身の細胞に酸素を送り届けるという、生命維持に不可欠な働きをしています。髪の毛の成長を担う頭皮の毛母細胞も、活発に細胞分裂を繰り返すためには、十分な酸素と栄養素を必要とします。しかし、鉄欠乏性貧血になると、ヘモグロビンの量が減少し、血液の酸素運搬能力が低下します。その結果、頭皮の毛細血管を通じて毛母細胞に供給される酸素の量が不足し、毛母細胞は酸欠状態に陥ってしまいます。酸素が不足した毛母細胞は、その働きが著しく低下し、健康な髪の毛を十分に成長させることができなくなります。具体的には、髪の毛が細く弱々しくなったり(軟毛化)、成長期が短縮されて抜け毛が増えたり、新しい髪の毛が生えにくくなったりといった症状が現れます。これが、鉄欠乏性貧血による薄毛のメカニズムです。特に女性は、月経による定期的な出血、妊娠・出産・授乳による鉄分の需要増加、無理なダイエットによる摂取不足など、様々な要因で鉄欠乏性貧血になりやすい傾向があります。そのため、女性の薄毛の原因として、鉄欠乏性貧血は決して珍しいものではありません。鉄欠乏性貧血の症状としては、薄毛や抜け毛の他に、疲れやすさ、倦怠感、息切れ、動悸、頭痛、めまい、顔面蒼白、爪の異常(スプーンネイルなど)、食欲不振などが挙げられます。もし、薄毛の悩みに加えて、これらの症状に心当たりがある場合は、鉄欠乏性貧血を疑い、医療機関(内科や皮膚科)を受診することをお勧めします。血液検査でヘモグロビン値や貯蔵鉄であるフェリチンの値を測定することで、貧血の有無や鉄分の状態を正確に把握できます。鉄欠乏性貧血と診断された場合は、医師の指導のもとで、鉄剤の服用や食事療法といった適切な治療を行うことが、薄毛改善への最も重要なステップとなります。原因疾患である貧血を治療することで、髪の健康状態も回復する可能性が高まります。