本日は毛髪科学の専門家である佐藤先生に、薄毛と遺伝の関係、そして予防の可能性について伺います。先生、やはり薄毛は遺伝するのでしょうか。「はい、薄毛になりやすい体質が遺伝することは科学的に証明されています。特にAGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモンに対する感受性の高さが遺伝的要因によって決まることが分かっています。ご両親や祖父母に薄毛の方がいる場合、ご自身もその体質を受け継いでいる可能性は高いと言えるでしょう」。では、遺伝だともう諦めるしかないのでしょうか。「いえ、決してそんなことはありません。ここが非常に重要なポイントです。遺伝するのは、あくまで『薄毛になりやすい体質』であって、『必ず薄毛になる運命』が遺伝するわけではないのです。同じ体質を持っていても、薄毛が早くから進行する人もいれば、比較的遅い人、あるいは目立たないまま一生を終える人もいます。この差を生むのが、まさに生活習慣や日々のケア、つまり『予防』なのです」。具体的にはどういうことでしょうか。「例えば、火事が起きやすい乾燥した家があったとします。これが遺伝的体質です。しかし、その家で火の元に注意し、消火器を準備し、火災報知器を設置しておけば、火事が起きるリスクは大幅に減らせますよね。薄毛予防も同じです。遺伝的素因というリスクを自覚した上で、食事や睡眠、ストレス管理、頭皮ケアといった『防火対策』を若いうちから徹底することで、薄毛の発症を遅らせたり、進行のスピードを緩やかにしたりすることは十分に可能なのです。遺伝を悲観するのではなく、リスクを知ることでより効果的な予防ができる、と前向きに捉えていただきたいですね」。